皆さんこんにちは。
さて、以前あじさい寺として有名な奈良県大和郡山市にある矢田寺をご紹介した時、ミニ遍路道があるとご紹介しました。
今回念願かなって矢田寺のミニ遍路で「結願」することができましたので、へんろ道をご紹介したいと思います。
矢田寺四国八十八ヶ所霊場巡りとは
「矢田寺四国八十八ヶ所霊場巡り」は大正末期から昭和の初期にかけて、矢田寺本堂裏の地蔵山に開設されたいわゆる「ミニ遍路」、「ミニ霊場」と呼ばれる施設です。
ミニ遍路は関東によくある「富士塚」と同じで、実際の霊場巡りは中々気軽に行けないところを、身近な場所で参拝することでお遍路に行ったのと同じ功徳が得られるものとして、西日本を中心に多く開設されました。
矢田寺のへんろ道は、開設当初は多くの参拝者で賑わいを見せたものの、戦争による混乱と相次ぐ台風被害で、戦後衰退します。
へんろ道の荒廃が進む中、2005(平成17)年に結成された「矢田寺へんろ道保存会」を中心に、へんろ道の保存・復興の機運が高まり、保存会をはじめ、多方面の支援・協力により通路や寺名看板の修復・整備が進められ、再び多くの人がお参りできる参詣路として、矢田寺のへんろ道は復活を遂げたのです。
こちらは矢田寺境内内の案内板です。
本堂の左側にへんろ道の案内板があり、先に進むと参詣道の碑が建っています。


いよいよお遍路開始です。
徳島県(第一~二十三番札所)
石仏は各札所の本尊を模したもので、弘法大師の像と並んでいる札所とご本尊だけの札所があります。
また、寺院名を記した案内板は、かつては木製のものが建てられていたそうですが、月日とともに朽ちたり、見えずらくなったことから、ステンレス製の新しい寺院名板の寄進を受け、保存会の皆さんの奉仕によって建てられたとのことです。
また、各ご本尊の下には、各霊場のお砂が収められています。
開創の際は、当時の高野山管長を招き、八十八ヶ所の石仏全ての開眼供養が行われたと伝えられます。
鳥のさえずりを聞きつつ、木漏れ日の中を進みます。清々しくてほんとに気持ちいいです。
しばらく上りが続きますが、訪れたのが3月中旬ということもあり、快適に歩くことができました。
第九番札所法輪寺を過ぎたところにイノシシ対策用の柵がありました。イノシシ用の柵は出口の方にもあります。自宅のご近所なんですが、野生のイノシシ、やっぱりいるんですね。
へんろ道の各所で松の幼木が保護されています。かつて矢田山には多くの松が自生していましたが、松食い虫の被害で多くが失われました。
かつて矢田山はマツタケがたくさん採れ、鉄道会社のパンフレットで紹介されるほど、マツタケ狩りで有名な場所だったとのことで、再びマツタケの宝庫となるよう、松の幼木の保護活動も、矢田寺へんろ道保存会のほうで行っておられるとのことです。
私の両親も矢田地区近隣が地元ですが、子どもの頃は秋になったら矢田山で山のようにマツタケが取れて、当たり前に食べていたと聞いてます。
第二十三番札所薬王寺に到着。こちらの札所は徳島県最後の札所になります。
高知県(第二十四~三十九番札所)
へんろ道は高知県の札所に入ります。
第二十四番札所最御崎寺は、室戸岬の突端にある空海修行の地としても有名なお寺ですね。
しばらく平坦なルートが続きます。視界の開けた場所からは麓の景色が見えます。
ちなみに、へんろ道は要所に案内版があって、道に迷うことなく安心して散策を楽しむことができます。
第三十九番札所延光寺に到着。こちらの札所が高知県最後の札所ですね。
愛媛県(第四十~六十五番札所)
ちなみに観自在寺は一番霊山寺からもっとも遠いため、「四国霊場の裏関所」とも呼ばれているとのこと。
第四十五番札所岩屋寺は、実際の岩屋寺同様、山岳霊場を思わせる巨岩を背に本尊の不動明王が建っています。
矢田寺のお遍路で見所の一つと言えるでしょう。


第四十六番札所浄瑠璃寺の周りは元々竹林だったそうですが、現在はカエデの苗木が植樹され、もみじ公園となっていました。


晩秋に訪れれば、紅葉も存分に楽しめそうです。
第五十一番札所石手寺の前は見晴台になっています。
休憩所である「じゅっぷく小屋」が再建され、奈良盆地を一望できます。
雄大な眺望を楽しみながら疲れた足をここで休めましょう。


見晴台から天理方面を臨みます。
こちらは奈良方面の眺望。こちらの方が見通しが良いですね。
この日は黄砂と花粉が非常に多かったのですが、冬場など空気が澄んでいたら薬師寺や興福寺の塔も見えていたのではと思います。
お遍路道の道中、山頂近くにお地蔵さんと満米上人の石像が並んでいます。
こちらは満米上人の石像とその御詠歌。
満米上人は小野篁(平安時代の役人で夜は閻魔庁に仕えたと伝わる)とともに地獄をめぐり、亡者の身代わりとなって責め苦を受ける地蔵菩薩に邂逅した後、多くの衆生が地蔵菩薩と結縁して地獄の苦しみから逃れられるよう、地蔵菩薩の像を作って矢田寺に収めた人物です。
つまり、矢田寺をお地蔵さんのお寺にしたきっかけとなった人物になりますね。
経塚の碑です。
満米上人が写経した法華経が納められているとのこと。
この経塚から、へんろ道は下り坂が中心になります。
香川県(第六十六~八十八番札所)
第六十九番札所観音寺付近には大きな岩がごろごろと転がっています。


このあたりから下り坂も急になってきます。登りより下り坂はヒザにきます…。
第七十一番札所弥谷寺を過ぎてこつ然と現れる祠。かなり異質な雰囲気の場所です。
これ、大砲の弾だと思いますが、なぜこんな場所に??
何か建物が建っていたと思しきスペース。かなり荒廃しています。
祠の前に池の跡があるので、水神、竜神などを祀った祠だったのかもしれません。
周りに案内板などもなく、医師に刻まれた文字も不鮮明なものが多く、どのような施設であったのかよくわかりませんでした。うーん気になる…。
第七十五番札所善通寺。高野山、東寺と並び弘法大師三大霊場に数えられる名刹だけに、巨石に囲まれ威風堂々たる佇まいです。
第八十四番札所屋島寺。いよいよお遍路もラストスパート。
実は四国霊場で私が実際に現地に行ったことがある場所はこちらのお寺だけだったりします。屋島の古戦場を巡った際に訪れました。
第八十七番札所長尾寺。さあいよいよ残る札所はあと一つです。
ついに第八十八番札所の大窪寺に到着!
ここまで所要時間はゆっくり歩いて1時間30分くらいでしょうか。
早い方だと1時間余りで踏破されるとのことなので、森林浴には程よい距離です。
最後の札所は本堂のすぐ裏手になります。
参詣路はよく整備されていて、軽装でも十分に歩くことはできます。
靴も本格的な登山用の靴ではなく、スニーカーで十分なので、ハイキングコースとして超オススメのスポットでした。
南僧房の前に、真新しい受付小屋が建てられていました。
あじさいに備えて建てられたものかと思います。
ここ2年間、コロナ禍で矢田寺のあじさい園は開かれませんでしたが、今年こそは久しぶりに開園されることを祈るばかりです。
ぜひ矢田寺にお立ち寄りの際は、八十八ヶ所霊場巡りでミニお遍路をご体験ください。
また、2022年コロナ禍から復活したアジサイ園の様子は下記記事をご覧ください。