皆さんこんにちは。
奈良県といえば、古代ロマンあふれる史跡や趣のある古社寺、豊かな大自然といった豊富な観光資源を誇る、観光県というイメージが強いと思います。
また、大都市圏である京阪神地区へのアクセスの良さから、ベッドタウンというイメージを持たれる方も、関西を中心に多いんじゃないでしょうか。
今回はそんな奈良県の全国で「ここだけ」「一番○○」といった事例をご紹介していこうと思います。
やっぱりそうかというものだけでなく、意外なところもありますよ。
奈良県の基礎データ
まず奈良県の基礎データから。
人口は1,315,007人(2021年8月推計人口)で47都道府県ではおおよそ29位あたりになります。
人口規模としては、全国で真ん中から少し下くらい。
ごくごく一般的な地方の県といえるでしょうか。
人口密度になりますと、面積が狭いこともあって、359人/㎢で全国14位ですが、奈良県は全面積から森林面や湖沼面を除いた可住地面積が全国最小で、可住地面積での人口密度では1.594人/㎢となって、全国10位となります。
県民人口のほとんどが、県北西部の奈良盆地に集中している奈良県は、人口の割には意外とまとまって人が住んでいます。
まあ、JRの沿線はのどかな田園風景も広がっているのですが、近鉄の沿線、特に大阪と直接つながっている近鉄の路線は、延々と車窓風景に住宅地が続きます。
特に、大阪へのアクセスがよい県西部が顕著ですが、ベッドタウンとして新興住宅地が発達。県外就業率の全国一位の座を、毎年のように埼玉県、千葉県、神奈川県と争う状況です。
具体的には毎年、29~30%という、関西地域では突出した数字になっていて、奈良府民という語もあるほど。
大阪市に隣接する生駒市では50%を超え、県西部の王寺町、三郷町、香芝市でも40%以上の人が、大阪で就業しています。どちらも大阪都心部、特に難波や天王寺まで、快速電車で15~20分程度なので、ミナミに勤めるなら京阪神間あたりに住むよりアクセスも良いうえ家賃も安いわけで、多くの人々が移り住んできた結果といえるでしょう。
ちなみに兵庫県では県全体の県外就業率は18%ほどですが、西宮市や尼崎市といった阪神間の県外就業率は30%ほどですので、おおよそ奈良県の県外就業率は、阪神地域と同じであるといえます。
観光・文化財の一番あれこれ
さて、奈良県といえば何と言っても観光県のイメージが強いかと思います。
ここでは、文化財や観光にちなんだ全国一をご紹介しましょう。
まず、奈良県は国宝建造物数が、全国最多の64件を誇ります。
棟数は京都府の73棟に次ぐ71棟(惜しい!)。
平城京のあった奈良市だけでなく、県内各所に広く分布していることが特徴です。
考えられない密集度ですね。
国宝つながりでは、彫刻の国宝は75件で全国最多。
多くの魅力的で貴重な仏像が、多数残されていることを裏付ける数字になっていますね。
どうしてここまでの多くの国宝建造物や、貴重な仏像が多く残されたのでしょう。
京都に比べ、政治の中心地から早くに離れた奈良は、戦乱が少なかったからと思う人も多いかもしれませんが、平氏の南都焼き討ち以来、実際には奈良は多くの戦乱を経験しています。
特に戦国時代、1532(天文元)年、大和に乱入した一向一揆によって、興福寺一帯は破壊されつくし、1567(永禄10)年には、松永久秀と三好三人衆、筒井順慶との戦いに巻き込まれ、東大寺が焼け落ちるなど、多くの古刹が戦乱に巻き込まれ、京都と比べて戦災に遭う機会が少なかったとは決して言えません。
やはり、多くの国宝建造物が残されたのは、まずは何度焼かれても、人々が復興をあきらめなかったことが挙げられます。
鎌倉時代、江戸時代の東大寺復興がその代表例と言えますし、最近では、薬師寺の復興伽藍や、興福寺金堂の復興も、失われたものを元に復そうという人々の思いがつながれた結果だと思います。
県域に広く名所・旧跡を残すという特性もあり、ユネスコ世界遺産の登録件数が以下のように3件と、全国一を誇ります。
・法隆寺地域の仏教建造物(1993年登録)
・古都奈良の文化財(1998年登録)
・紀伊山地の霊場と参詣道(2004年登録)
古代から中世、現在に至る長い歴史を持ち、遺産というだけでなく、現在なお信仰の対象として生き続けている文化財が、広く県内に分布しているという点は、特筆すべきといえるでしょう。
さらに上記の3件に加えて、「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の2024年登録に向けた動きもあります。
登録されれば4つ目となるのですが、果たしてどうなるでしょう。
構成資産のほとんどが土中に埋もれているのが、かなり高いハードルとなっているかと思われますが、キトラ古墳の天文図などは現存世界最古の天文図とされるなど、世界的に極めて貴重な遺構も数多く含まれることから、動向に注目です。
その他に、史跡名勝天然記念物の登録件数146件は全国一を誇り、その中の特別史跡10件も全国最多となっています。
これだけ多くの文化財や名所旧跡を、県内各地に抱えながら、観光面における奈良県最大の弱点は、宿泊施設の少なさです。
近年、ホテル誘致に積極的に取り組み、若干の改善はみられるものの、施設数、客室数は、全国ワーストレベル(涙)。
日帰りで日中奈良観光を済ませて、夜は京都、大阪で宿泊するというパターンが多いようです。
主要な観光地へ、大阪、京都からのアクセスが非常に良いというのが、逆に仇となっているともいえるでしょうか。
県内各地に、それぞれが主役級の名所を抱える奈良県は、正直日帰りで回りきることが不可能なだけに、観光客の利便性向上のためにも、県内の宿泊施設の整備が急務かと思います。
交通のあれこれ
奈良県と聞いて、交通関係に特色があるなんて印象を持っている方は少ないんじゃないでしょうか。
実は、交通関係ではいろいろと特色のあるトピックのある県なんです。
まずは鉄道関係から。
奈良県は県内を走る鉄道が全線電化されています。
奈良県の他、全線電化を達成しているのは、東京都、大阪府、神奈川県、沖縄県だけなのですが、実は全国で最初に全線電化を果たしたのが、他ならぬ奈良県でした。
1984(昭和59)年に関西本線の木津~奈良間が電化されたことで達成されました。
ちなみに東京都が全線電化されたのは1996(平成8)年で、奈良県は東京より10年以上も早く全線電化を成し遂げたことになります。
どうです!すごいでしょ!と声高らかにといきたいとこですが、実は奈良県、JR在来線の営業距離が92.6キロで、これは全国46位。沖縄県にはJRがありませんので、全国で最も短いのです。
JR以外は、全線電化をいち早く果たした近鉄の路線しか県内にはありませんでしたので、早々に全線電化を達成できる下地があったのでした。
また、全線電化されていることもあって、県内を走る定時列車に気動車がありません。
奈良の他には東京、神奈川、沖縄だけで、結構珍しいのです。
旅客の気動車を県内で見かけることがないので、乗り鉄気味の私などは、他県で気動車を見かけるとちょっとテンションが上がります(笑)
さらに奈良に関する鉄道の話題で避けて通れないのが、JRの走る都道府県で唯一、定時運行している特急がないことです。
奈良県の鉄道事情は、県内の主要拠点を抑える近鉄が、JRに比べて圧倒的に優勢で、天皇陛下をはじめとした皇族方も、橿原神宮を訪れる際は、京都から近鉄特急を利用します。
JR桜井線の畝傍駅には、昭和天皇の橿原神宮行幸に際して1940(昭和15)年に建設された貴賓室があります。折上格天井という最高の格式を持つ、豪華な貴賓室がしつらえられているにもかかわらず、皇族方が奈良線、桜井線を経由して畝傍駅を利用することはありません。
このように奈良で特急といえば近鉄特急なのですが、この状況に風穴をあけることが期待されるのが、2019年の年末に運航開始した臨時特急まほろばです。
おおさか東線の全線開通で、新大阪~奈良駅が直通したことで運行が開始された特急で、山陽新幹線と奈良のアクセスが格段に向上しました。
運賃も新幹線と組み合わせて購入すると、費用面でも十分に近鉄特急に対抗できる特急です。
現在コロナ禍にあって運行されていませんが、新幹線との組み合わせで格安で利用できることから、新大阪~奈良~京都間で運行すれば、東海道新幹線の利用者にも食い込める可能性を秘めています。
今は奈良~京都間の旅客輸送は近鉄が圧倒していますが、「特急まほろば」は、そんな奈良へのアクセス事情を変えてくれるかもしれないですね。
少し、鉄道の話題が長くなりすぎました。
鉄道と並んで、おなじみの公共交通機関といえば、バスになりますね。
奈良県には、全国で最も長いバス路線があることをご存知でしょうか。
奈良交通の八木新宮線は、奈良県橿原市の大和八木駅を起点に南下して、紀伊山地を縦断し、和歌山県新宮市のJR新宮駅に至る路線です。全長166.9キロ、停留所数167、全線の所要時間は6時間半と、走行距離、停留所数、所要時間が一般路線バスとしては日本一のバス路線です。
かなり長時間のバスの旅となりますので、途中何度か10~20分ほど停車する停留所があり、このとき車外で乗客も休憩可能です。
上野地では休憩中、観光名所の谷瀬の吊り橋を訪れることもできます。
バスの出発時間を考えると往復する時間はありませんが、その高さと長さを目の当たりにすることができます。
「日本一長い」という話に続いて、「日本一短い」のが県内を走る高速自動車国道の距離で、西名阪自動車道の天理IC以西の区間18.2キロと全国最短です。
もっとも、一般国道自動車専用道路は名阪国道、京奈和道、第二阪奈道、南阪奈道とありますので、極端に高速道路がないというわけではありません。
金魚の出荷数日本一
さて、大和郡山市民ととしてはこの話を削るわけにはいきません。
奈良県大和郡山市は金魚の出荷尾数全国一を誇る、金魚の一大生産地です。
愛知県の弥冨、東京の江戸川と並んで日本三大産地の一つとされています。
ただ、東京の江戸川区は宅地化が進んで業者も減っているようで、実は私は東京在住だった頃は江戸川区民だったのですが、金魚の町という印象はありませんでした。
弥冨金魚は、江戸時代に大和郡山から金魚養殖が伝わったことが起源で、現在は品種数と売上高で、大和郡山を上回り全国一となっています。
大和郡山では年々業者、養殖池の数が減少傾向にありますが、伝統産業を盛り立てようと、積極的に金魚の町を前面に押し出した、「全国金魚すくい選手権」などのイベントを開催して地域活性化に取り組んでいます。
しかし、コロナ禍で全国の縁日や、「金魚すくい選手権」が中止され、郡山の金魚もかなりの苦境に陥っています。
一刻も早く、この感染症が収まってほしいと願うばかり。
ちなみに奈良県は、全国で唯一水産試験場がありません。海なし県で、魚の養殖も大々的に行っているのが金魚だけだからということでしょうか。。。
その他いろいろ
最後に、奈良県のいろいろ、特に「ない」ものを中心にざっとご紹介しようと思います。
まず、奈良県は全国で唯一県域民放ラジオ局がありません。
1984(昭和59)年に周波数(85.8MHz)の割り当ては行われているのですが、民放ラジオ開局の動きは全くありません。
奈良県内唯一の県域民放放送局は奈良テレビですが、こちらもなかなか特徴的。
民放ではあるのですが、筆頭株主は奈良県で、「奈良県」のCMや県政に関する番組などが数多く流れます。
地デジのリモコンキーIDは「9」で、全国で、TOKYOMXと奈良テレビでしか割り当てられていません。
経営規模が小さいこともあって、ワンセグ放送の開始が全国で一番遅かった(2019年12月)りもしたのですが、最近では経営も安定化し、自主制作の番組も増えています。
関東、関西のような広域放送局が強い地域でローカル局は苦戦しがちですが、広域局では流されない身近な情報がたくさん放送されますので、ぜひ地元の放送局をご覧ください。
奈良県は南部の山間地域を中心に、大雨による災害の頻発地域でもあるので、自衛隊に災害派遣を要請することも多いのですが、奈良県の災害派遣には、京都府宇治市の大久保駐屯地の部隊が、対応しています。
海なし県のため海上自衛隊の基地は当然ありません。
奈良県内にある唯一の基地は、奈良市にある航空自衛隊奈良基地です。
場所はこちら。
国道24号線沿い、ウワナベ古墳の北隣に隣接する地域です。
あれ、航空自衛隊の基地って、奈良に飛行機の滑走路なんてあったっけ?と訝しく思われる方もあるでしょう。
はい、奈良基地に戦闘機の離発着する滑走路などはありません。
あるのは、航空自衛隊幹部候補生学校。
航空自衛隊のいわゆる「将校」さんの養成学校があります。
航空自衛隊幹部の皆さんは、皆、奈良で職務に必要な技能や知識の教育を受けて、今日も日本の空の守りを担ってらっしゃるんですね。
最後に、奈良県には全国で唯一刑務所がありません。
2017(平成29)年、全国に7か所しかなかった少年刑務所の一つ、奈良少年刑務所が廃庁となって、刑務所がなくなりました。
ちなみに未決拘留者を収容する拘置所は、旧奈良少年刑務所の地に奈良拘置支所が、大和高田市に葛城拘置支所がおかれています。
奈良少年刑務所は、明治五大監獄として知られる奈良監獄の1908(明治41)年竣工の建造物を、そのまま使用していたことでも知られます。
設計者は辰野金吾(東京駅の設計者として著名)の下で建築を学んだ山下啓次郎で、その優れた設計は監獄近代化の到達点と日本政府に評価され、模型が1910年の万博に出展されたほどでした。
明治に建設された建物が非常に良好な状態で残っており、2014(平成26)年に重要文化財への登録を目指す民間団体が発足して、建物保存に向けた動きが本格化します。
ちなみに、運動を始めた団体の会長は、設計者山下啓次郎の孫でジャズピアニストの山下洋輔でした。
この活動が実を結び、2017(平成29)年、旧奈良監獄の建造物17棟・2基及び土地が国の重要文化財に登録され、美しいレンガ造りの建物の保存される道が開かれます。
監獄の遺構としては、網走監獄に続く重要文化財となり、全国二例目の貴重な文化財となりました。
建物はホテルへの転用を軸に活用を検討されていますが、網走監獄同様、広く一般に公開される形になるとよいですね。
以上、奈良県の特徴的な「ここだけ」の話、「一番」の話でした。