皆さんこんにちは。
奈良県下には古い町屋の町並みを残した、散策スポットがたくさんあります。
今回ご紹介する、奈良県御所市の中心街区、御所まちも、町屋が並び散策におすすめの町になります。
今井町や五條新町のような伝統的建造物群保存地区ではありませんが、江戸時代以前の町割りが完全に残り、江戸から昭和にかけての古い町屋が軒を連ねる、ノスタルジー溢れる町です。
御所まちとは
御所まちは、御所市役所の周辺、葛城川を挟んで西御所、東御所という二つの町から成るエリアです。
ともに16世紀中ごろか、それ以前に中世集落として発生したとみられますが、西御所は関ヶ原の戦いの後、御所1万石の大名に取り立てられた桑山家の陣屋町になったことで発展した商家の町、東御所は1546(天文15)年に開山された、大和五ヶ所御坊の一つで御所御坊こと圓照寺の寺内町を直接のルーツとします。
異なるルーツを持つ両町ですが、東西ともに中世の遺風を持つ環濠集落というあたり、奈良県内にある中世以来の集落の、大きな特徴をもった町です。
アクセス(ごせまちセンター)
御所まちの場所はこちらです。
JR御所駅、近鉄御所駅からも近く、京奈和道の御所ICからも車で5分ほどの場所にあり、交通アクセスは大変良い場所になります。
御所まちを散策される際は、まず、2021年に開設されたごせまちセンターに立ち寄られることをお勧めします。
場所はこちら。
JRや近鉄の御所駅からは大変アクセスしやすい場所になっています。
・開館日時:9:00~17:00
・休館日12/27~1/3
下記のような御所まちの観光マップや、観光情報などを入手できます。
マップがあると、町の見所を効率よく抑えながら散策可能なので、是非とも利用いただきたいところです。
トイレや休憩コーナーもありますので、散策の拠点におすすめの施設。
御所まちは、近鉄、JRによる電車でのアクセスが便利ですが、お車でお越しの場合は、御所市役所の駐車場か、アザレアホールの駐車場をご利用ください。(ともに無料です)
市役所、アザレアホール駐車場の利用時間は9:00~17:00で、時間外は門が閉まりますのでご注意ください。
下街道(高野街道)
西御所の北西角が、北側の町の入口。はやくも風情ある町屋がお出迎えです。
町屋の前を南北に通る道は、下街道(高野街道)。
下街道は、大和郡山の柳町大門から五條までをつなぎ、中世から近世にかけて、京都、奈良、和歌山をつなぐメインストリートで、御所まちも、その主要な町場のひとつでした。
町の北西入口に設けられていた高札場の跡。
こちらの高札は2008(平成20)年に復元されたものです。
町の入口で街道沿いということもあり、道行く人に法令を徹底するため、この場に高札場が設けられていました。
御所は江戸期のほとんどが天領でしたので、幕府の法令がこのように掲げられていたのでしょう。
高札場はご覧の通り、遠見遮断と呼ばれるクランク状となってます。
遠くを見通せない仕組みで、城下町や環濠集落によくみられる造りです。
西御所が陣屋町として出発したのは、関ヶ原の戦い直後ということもあり、まだまだ戦国の空気が残っていた時代。こうしたちょっとした風景から、次代の緊張感を読み取ることができますね。
下街道沿いにある「むろ大師」の道標。
御所まちから、下街道沿いに南へ数キロの距離にある、室大師こと葛成山寶国寺を示す道標です。
こういった石の道標は、旧街道沿いならではの風景。
幻の国産万年筆、モリソン万年筆の本社跡をリノベしたモリソン万年筆&カフェ。
ランチのカレー、パスタが人気のお店です。
店内はおしゃれな雰囲気で、万年筆の展示もありました。
ちなみにモリソン万年筆は、1918(大正7)年創業で、戦後万年筆需要が低下してからは手づくりの高級万年筆の製造を行っていました。
1970(昭和45)年頃、惜しまれつつ万年筆製造を終了しましたが、こちらの万年筆、今でもたくさんの愛好家がいらっしゃるようで、ヤフオクなどでの平均落札価格は16,000円ほど、最高額は16万円を超えてました(ひょえ~)。
こんなすごい会社が御所にあったんですね。
モリソン万年筆&カフェの脇に、西御所西端の濠が流れます。
こちらは柳田川から環濠へ水を引き込む取水口。
環濠もほぼ暗渠化されることなく、綺麗に残っています。
魚の棚界隈
通りの片隅、T字路の突き当り衝破除(しょうはよけ)が立っていました。
風水にもとづいて、悪い気の流れをT字路のつきあたりで食い止めるために設置されているものです。沖縄の石敢當と同じ役割のものですね。
こちらは江戸時代以来の背割り下水。
今もそのまま、町内各所に残っています。
魚の棚は本町と並んで大きな商家が目立つ地域です。
市松模様のタイルがかわいい、タバコ屋さん。
タバコ屋さんの少し南側に大神宮がありました。
こちらは、1830(文政13)年の「おかげ参り」のとき、祀られた大神宮で、毎年6月16日に大神宮祭りが行われ、柿の葉寿司を食べたり、衣替えを行う風習があるとか。
奈良県内の古い町には、必ずと言っていいほど大神宮が祀られている印象があります。
江戸時代のお伊勢参りの熱が、いかに高いものだったかがわかりますね。
本町界隈
1719(享保4)年創業の油長酒造さん。杉玉がいい色になってますね。
「油長」とは少し変わった屋号ですが、酒造を始めるまでは菜種油を製造し商っていたそうで、その時の屋号「油長長兵衛」に由来します。
歴代の当主は山本長兵衛を名乗り、2022年現在、13代目が老舗の造り酒屋を率いておられます。
趣ある町屋の酒蔵から通りを挟んで、近代的な醸造タンクが立ち並んでいます。
町屋と近代的なタンク群のコントラストがおもしろい風景ですね。
ちなみに手前の町屋は前田紙店さんで紙屋さん。
こちらの建物も、つし二階の伝統建築ですが、現役稼働中です。
旧御所郵便局。
屋根と窓ががかわいい建物です。
こちらは国の登録有形文化財「中井家住宅」。
1792(寛政4)年の棟札を持つ、御所まちでも指折りの歴史ある建築物です。
中井家は江戸時代庄屋を務めた商家で、現在も子孫の方が居住され、「御所町検地地図」など江戸期の御所町関連の史料を千点近く所蔵されているとのこと。
看板がいい味出してる住宅です。
魚の棚、本町エリアは、様々な時代の町屋が、多く集まっている地域になります。
こちらは町内では珍しい大和棟の町屋。
基本的に大和棟は農家の建築様式なので、商家町だった西御所ではもともと少なかったのかな。
葛城川沿い
本町通を東に向かって葛城川に出てきました。
この川を境に、西御所と東御所に分かれます。
葛城川西岸の河原地蔵。
お堂は新しく、付近もきれいに整備されていますが、1742(寛保2)年の御所町検地絵図にも描かれており、古くから祀られているお地蔵さんです。
河原地蔵の脇に立つ大神宮の常夜灯。
御所から葛城川沿いに、伊勢街道まで抜けるルートもあったんだろうなと想像します。
伊勢を目指すなら、高田を経由するより近いですからね。
葛城川越しに、圓照寺の大きな屋根が見えます。
東御所の町の様子は、次回にご紹介しようと思います。
実のところ、圓照寺の寺内町を見てみたいと思ったのが、御所まちを知った切っ掛けだったのですが、不勉強で、ここまで江戸から昭和にかけての町屋が、たくさん残るスポットだったとは、全く知りませんでした。
江戸時代の町割りと趣ある町屋、環濠と背割り下水が往時のまま残る町並みは、一見の価値ありです。
JR、近鉄御所駅からすぐの場所で、無料の駐車場もあり、電車でも自動車でもアクセス抜群なのも、訪れるにはうれしいですね。
街歩きが好きな方には、非常におすすめのスポットでした。
引き続き、東御所についてはこちらでご紹介します。