皆さんこんにちは。
2027年、品川~名古屋間で中央新幹線、いわゆるリニア新幹線が開業します。
名古屋以西のルートについては名古屋~大阪間が最短で2037年の開業予定ということで、この記事を書いている2020年1月時点ではまだまだ先の話という感もありますね。
中央新幹線の名古屋以西ルートについては、当初の基本計画から「奈良市周辺」が経由地に挙げられ、奈良県民にとってはリニア新駅は長年の悲願と言っても過言ではないでしょう。
名古屋以西ルートの新駅設置場所については、三重県が亀山周辺、大阪府は東海道新幹線との接続も踏まえて、新大阪駅でほぼ固まっているのに対して、現在奈良県では、奈良市、生駒市、大和郡山市が新駅誘致に名乗りを上げており、県内でまとまっていない状況です。
また、JR東海は現在その可能性を否定しているものの、京都市、京都府が京都駅への中央新幹線誘致をまだあきらめておらず、三重~大阪間のルートはしばらく各自治体の綱引きが激しく続きそうですね。
それでは、現在奈良県内で候補地となっている3つの市に新駅ができた場合のメリット、デメリットなどどのように考えられるのか、見ていきたいと思います。
奈良市
まずは、県庁所在地の奈良市です。
奈良市は、JR奈良駅、近鉄奈良駅、新大宮駅といった奈良市中心部と、京都府南部に面したJR平城山駅付近を、具体的な候補地として挙げています。
奈良市案の最大のメリットは、なんといっても県庁所在地であり、奈良公園一帯の市内中心観光地へのアクセスも至便という点に尽きるでしょう。
木津川以南の京都府南部からのアクセスも良く、亀山から新大阪までの経路を考えた場合もほぼ一直線のルート上にあり、中央新幹線全体の経済的最適化にも寄与できるルートと考えられます。
デメリットは奈良県全体で考えると、あまりに北に寄りすぎているため、中南和地域以南からのアクセスがやや不便に思われる点でしょうか。
生駒市
続いて生駒市です。
具体的な候補地としては、関西文化学術研究都市に面した高山地区への誘致を目指しています。
メリットは生駒市のパンフレットによると、企業誘致に有利な条件がそろっているため、現在の東海道新幹線の「のぞみ」に相当する、速達列車の停車駅にできるということだそうです。
デメリットは、なんといってもアクセスの悪さではないでしょうか。
在来線との接続も困難な地域で、多くの奈良県民にとって、とてつもなくアクセスしづらい場所になりそうです。
中南和以南地域の利用者だと、近鉄特急で名古屋から乗車したほうが良いということになりかねないかもしれないですね。
大和郡山市
最後は大和郡山市です。
現在のところ具体的な候補地は上がっていませんが、おそらくもっともよい場所は近鉄郡山駅と筒井駅の中間にある、近鉄線とJR線の交差地点付近が、最適地ではないかと考えます。
仮に、この場所に駅ができた場合、近鉄、JRも接続駅として新駅を開業するでしょうから、県内全域からの鉄道アクセスには抜群の立地となります。
仮にこの地が新駅となった場合、JRを使えば奈良や法隆寺まで10分以内で到着でき、近鉄を使えば、薬師寺、唐招提寺のある西の京駅や、橿原、飛鳥への接続も非常に便利で、観光アクセスも抜群です。
大和郡山市の最大のメリットは、なんといっても交通アクセスの良さとなります。
鉄道はもちろん、東西に西名阪自動車道が走り、南北には京奈和自動車道が開通する予定ですので、自動車によるアクセスも他の2市に比べ抜群に良いと言えます。
また、奈良、生駒に比べ、中南和以南からのアクセスもよいため、奈良県民全体にとって、最も良い立地といえるんじゃないでしょうか。
このメリットの証左といえるのが、県内35市町村と19人の県会議員が参加(平成28年8月時点)した『「奈良県にリニアを!」の会』が、大和郡山への県内新駅候補の一本化を、当時の荒井知事に要望したことからもうかがえます。
奈良県の自治体数は2020年現在39ですから、35市町村といえば、おおよそ9割の自治体が大和郡山市への新駅設置を要望していると言えます。
もっとも、奈良市と生駒市は事前に連絡もなかったことから、大きく反発しているようですが、県内の9割の自治体が要望しているという事実は、県内全体へのメリットへの期待の大きさを物語るものといえるでしょう。
デメリットは、亀山~新大阪間での経路を考えた場合、少し南に寄っているかなという点です。
中央新幹線全体の最適化を考えた場合は微妙にずれてる場所といえるかもしれません。
また、奈良市、大和郡山市と県内では人口密集地に線路を建設する必要があるため、用地買収を含めた建設コストが非常に高くなる恐れがあります。
原則的に中央新幹線はJR東海が自己資金で建設する方針をとっていますので、県が応分の費用負担を行わない限り、実現は難しいかもしれませんね。
京都の巻き返しはあるか
さて、実際のところ、現実的にどこに新駅が置かれそうかと考えたとき、中央新幹線はJR東海が建設費用を自己資金で捻出する方針のようですので、なんといっても経済的メリットが高い場所になるでしょう。
となると、やはりJR平城山駅や近鉄高の原駅近辺の奈良県北辺部、もしかしたら木津川市や精華町あたりを通る可能性が高いかなと個人的には予想しています。
今のところ、JR東海は京都駅周辺への乗り入れはないとしているものの、用地買収を含めた建設工費の抑制を考えた場合、奈良市周辺でもある京都府南端部の新駅設置は、かなり現実的な選択肢といえると思います。
京都市は当初計画ではルートから外されていますが、新たな日本の東西交通の大動脈から外れることに大きな危機感を抱き、経済波及効果の大きさをアピールポイントとして、積極的に路線変更を訴え続けています。
かつて、東海道新幹線の当初ルートは京都府南端、現在の学研都市付近を通過する予定であったのを、猛烈な運動で京都駅への乗り入れを実現させた「実績」があることも、運動を後押ししているかもしれません。
中央新幹線が奈良を通る場合、東海道新幹線では「のぞみ」の減便が予想されるため、交通アクセスの利便性が低下することを、京都の特に財界は恐れているようですね。
しかしながら、リニアの京都駅乗り入れは、現時点ではJR東海とほとんどの関係都道府県から支持を得られておらず、京都ルートなら新駅設置の期待もあった滋賀県の支持すら現状得られていない状況です。(2014年10月20日三日月知事の「何でもかんでも京都でなくてもいいのではないか」という発言で、奈良市周辺ルートを支持)
そういうこともあり、京都府南端部は別として、現状では京都駅付近を通過するルートは可能性が低いと考えられます。
そうなると、京都市近辺の方がリニアを利用する場合は、新大阪を利用するか、奈良方面に南下、もしくは新幹線で名古屋乗り換えになりそうですね。
時間的には東海道新幹線で新大阪で乗換が一番早そうです。まあ、これでも東海道新幹線の、のぞみで東京に行くよりは十分に早いと思いますけどね。
名古屋以西ルートの開業は早くても2037年ごろで、まだまだ先ですが、人の動きを根本的に変えるインパクトをもつ巨大プロジェクトです。
オリンピック、万博に続く夢のある話として、今後も注目していきたいですね。
2022年2月現在の状況
2022年2月21日、奈良市と大和郡山市は共同で「奈良市周辺」にリニア中間駅の早期設置を求める要望書を奈良県に提出しました。
奈良県内に確実に中間駅を設置するという点で、両市の思惑が一致したためで、大和郡山としては、郡山への中間駅誘致をやめる訳ではないとのこと。
リニア中央新幹線のルートで唯一具体的な新駅設置場所が決まっていないのは三重と大阪の中間駅だけですので、少なくとも奈良県内の候補地を早く一本化する必要があるでしょう。