皆さんこんにちは。
前回は、陣屋としては「堅固」に過ぎる、城跡「小泉城」をご紹介しました。
今回は、その城下に広がった「小泉」の町のご紹介です。
小泉の町はJR大和小泉駅の西側に広がる町ですが、かつては片桐家1万石の小さな城下町でした。
小さいとはいえこの小泉の町は、城下町の特性をきっちり備えるだけでなく、現在国指定の重要文化財を2つも抱える見どころがぎゅっと詰まった町なのです。
「城下町」の特徴を色濃く残す小泉
片桐貞隆が小泉城に入ると、それまで城域内に住んでいた農民たちを街道筋に転居させ、城下町の整備をはかりました。
小泉の南で古代からの街道である「北の横大路(現在の国道25号線)」から「龍田越奈良街道」が、小泉神社に向かって北上しており、神社の前で東に折れたところから町方の城下町が始まります。
街道は「西方」「本町」を抜けると富雄川の手前で北に折れ、「中之町」、「北之町」と続いて町方の城下町を北に抜けていき、郡山の城下町へと通じていました。
また、本町から東に富雄川を渡ると村方の「市場」がありました。
市場は、現在のJR大和小泉の西に広がる集落です。
これら5つの町割りは現在でも往時の姿を色濃く残していて、町方の街道筋には風情のあるお屋敷が残り、村方の市場には蔵のある立派な庄屋さん風のお屋敷が多くみられます
小泉城下は大変コンパクトな作りですが一般的な城下町の特徴を備えた町割りがそのまま残っています。
その特徴は二つ。
1.出入り口付近に寺社を配置する。
2.通りを屈折させる(要するにクランクをつける)。
町の出入り口に寺社を配置するのは江戸をはじめ多くの城下町にみられますが、目的は有事の際に防御陣地とするためです。
また通りにクランクをつけるのはこれまた有事の際に、敵の進軍の勢いを落としたり、伏兵を置きやすくするなどの効果を狙ったものです。
上の写真は国道25号線から小泉神社のほうに旧龍田越奈良街道を北上して、城下町の入り口付近を撮影したものです。
左奥が小泉神社に登る石段になっていて、城下町に入るには右に折れていくことになります。
小泉神社自体は室町時代からこの地に鎮座している古社ですが、有事の際は城下町の入り口を守る防御陣地にできるよう街道を通していて、ちょっとした虎口(お城の入口)のような構造になってますね。
城下町に入りました。
大きくて立派なお屋敷が多いです。
街道沿いに進むと「西方」と「本町」の境がクランクになってます。
食い違いで町割りしてるんですね。
本町を東に向かうと富雄川の手前で街道は北に折れますが、街道のわきに大きな石灯籠が立っています。
街道に沿って中之町を進みます。
中之町、北之町には酒屋さんや電器屋さんなど、今も営業してらっしゃるお店があります。
また、かつてはお店だったのかな?というお屋敷もありますね。
こちらも街道沿いは風情ある古いお屋敷が並んでいます。
中之町と北之町はやはり食い違いになっており、クランクに大和国唯一の庚申信仰総道場として知られる金輪院という寺院があります。
1659年創建と歴史ある寺院で庭園や表門等、複数の文化財が大和郡山市指定の文化財になっています。
庚申さんのお寺ということもあり、表門や梵鐘にもたくさんのお猿さんがいます。
立ち寄った際はお猿さん探しすると楽しいですよ。
ちなみに、この金輪院の西側が、小泉城の大手となっていました。
ここでも重要な出入り口のそばに寺院が置かれております。
このクランクの北側が北之町になっており街道は町の出口で小山にぶつかって東に折れます。
町の出口北の小山に築かれたのが「慈光院」です。
北側の出入り口も屈折&寺院配置と一貫してますね。
小泉の城下町は非常にコンパクトなので小一時間もしないうちにすべて回れます。
道端の水路に架かる石橋など、江戸時代に作られたものがそのまま生活道として現役で使われていたり、少し裏通りを見ても楽しいかもしれません。
重要文化財の建築が小さな町に2か所もある!
この小泉の町、国の重要文化財の建築がある場所が2つもあるというのをご存じでしょうか。
ちなみに、郡山の城下町には、国の重文建築はひとつもありません。
これって地味にすごいって思うの私だけでしょうか。
「国指定重要文化財」の看板は、奈良県内に住んでいると場所によってはそれほど珍しくもない看板なのですが、京都などの文化財の多い都道府県を除けば意外とお目にかからないものであると気づきます。
当たり前に日常にあると、近所に住んでる人間ほどその貴重性に気付かないものですよね。
まず一つ目が、小泉神社の本殿です。
本殿は社務所に申し出れば直接見学可能です。
本殿は室町末期の天文年間(16世紀前半ごろ)の建立とされる、かなり歴史ある建造物です。
ちなみに、お正月や御祭りの際には正面の門が開放され、本殿を拝殿側から直接見ることができます。
こちらは小泉神社の表門です。
陣屋にあった門を移築したものと伝わり、小泉城で唯一現存する建築で貴重な遺構になります。
慈光院は2代藩主の片桐貞昌が1663年に建立した寺院になります。
片桐貞昌は、片桐石州という名のほうがとおりが良いかもしれません。
大名茶道で知られる「石州流」の開祖で、小泉藩歴代藩主最大の有名人です。
将軍の茶道指南役になるほどの一流の茶人が建立したこともあり、境内全体が茶席として設計されたきわめて特徴的な寺院となっています。
こちらの拝観料1000円。
高いと思うなかれ。
素晴らしいお庭を見ながら、お茶菓子付きでお茶を一服いただくことができます。
※慈光院については下記の記事で詳しくご紹介しています。
さて、ここまで小泉の町をご紹介してきましたがいかがでしたか。
実は私の現住所は片桐の殿様の元ご領地でして、郡山というよりむしろ小泉が地元なのですが、あまりに小泉の町を紹介するような記事が少ないので、ならば自分でと記事にした次第です。
お城、小泉神社、城下をぐるりとめぐって、最後は慈光院で奈良盆地を借景に庭を見ながらお茶をいただくというのがおすすめのルートです。
自然の地形を利用しつつ、堀割、町割りが行われたコンパクトな城下町を機会があれば一度体感ください。
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