皆さんこんにちは。
前回の「武士の家計簿」に引き続きまして、歴史好きのブログ管理人が実際読んで皆さんにも是非お勧めしたい本を今回もご紹介します。
今回は、中世史ブームを引き起こし、ベストセラーともなりました、呉座勇一さんの著書「応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱」(中公新書刊)をご紹介します。
著者のご紹介
著者の呉座勇一さんは新進気鋭の歴史家で、最近はテレビの教養番組にもよく出演されていますね。
専門の中世史関連の作業以外にも、今までプロの歴史家はあえて「無視」していたような「陰謀史観」や、史料の裏付けなく通説を覆すようないわゆる「トンデモ史観」にも、真っ向から反論、論証されるなど、精力的に活動されています。
プロの歴史研究者となると、膨大な資料に向き合うのにとにかく時間は貴重なもの。
なので、ハナから怪しい説に時間をかけるのは「無駄」と無視する研究者が多いのです。
そんな中、呉座さんは明らかに事実と異なる「俗説」「異説」が「事実」として流布することに危機感を強めて、そのような「トンデモ史観」とも向き合っておられるようです。
プロの研究者に冷静に反証してもらえると、私のような素人でも安心して巷間広まる「異説」や「トンデモ史観」と接することができて大助かりです。
「俗説」「異説」の類って、ファンタジーと割り切って楽しむ分には楽しいものですから。
呉座さんも歴史と向き合う中で推理、推論を全否定されているわけではないです。
あくまでその推理、推論を史料の裏付けなし、もしくは極めて弱い論拠で「事実」と決めつけて、先人たちが少しずつ積み上げてきた「通説」をないがしろにする「姿勢」を激しく非難されているように思います。
そんな呉座さんが世に知られるようになった一冊が、この「応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱」です。
「応仁の乱」その内容は
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応仁の乱は有名な戦乱ですね。
特に11年間というとても長い期間にわたって続いたということで有名です。
有名の反面、この期間の長さ以外、特に印象に残ってない方も多いのではないでしょうか。
応仁の乱をざっくりと説明するのであれば、
・三管領の家格にあった畠山氏、斯波氏の家督争いをきっかけとして室町幕府の諸勢力が東西に分かれて戦い、最後は西軍が解体されて終わった。
というものです。
しかし戦乱に至る過程から収束まで、あまりに長い期間にもかかわらず、本書は非常に丁寧かつ抜群の明快さで描き出しています。
大乱にいたる大きな要因として、大和国内で勃発していた興福寺一乗院と大乗院衆徒間の果てしない闘争を、南北朝期にまでさかのぼり、大乱が終わったあとまで丁寧に経過を追っていきます。
※ちなみに大和国のこの騒乱は戦国末期、筒井氏が織田政権下で大和守護になるまで続きます。こっちのほうが大変ですね。
応仁の乱といえば京の町を灰燼に帰した戦乱というイメージが強いのですが、本書は全編にわたって大和国の国衆たちの動向を詳しく追っています。
おそらく応仁の乱の一次史料を興福寺のお坊さんが書いてることや、乱の原因となる要人もまた興福寺のお坊さんが多く、彼らの目から乱をとらえたからかなと思われます。
また、中央の動向だけでなく、当時の守護在京制をはじめとした統治体制が乱の前後でどのように変遷していったかも詳細に描き出しています。
今どきの教科書って「守護在京制」なんて教えてるんでしょうか。※私は大人になって初めて知りました。
ちなみに「守護在京制」とは主に畿内周辺の守護大名たちは京都に住んで中央政界で活躍し、地元の地方は守護代が実際は治めてたという制度です。
この本を読むと、朝倉、三好、織田といった、もともと守護代の家格の一族が戦国大名として雄飛した理由がよく理解できます。
また、応仁の乱は現在に伝わる日本文化の起点にもなっていることもわかりますので、
戦国史が好きな方も、そうでない方も読後いろいろ「腑に落ちる」一冊になっていますので、まだ読んでない方は是非一度読んでみてください。
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