大和徒然草子

奈良県を中心とした散歩や歴史の話題、その他プロ野球(特に阪神)など雑多なことを書いてます。

巨大地震で海のない奈良県地域を襲った意外な水の脅威とは!?

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皆さんこんにちは。

 

昨今、全国各地で大きな自然災害が起こっています。

大雨や台風による水害は、気象観測や天気予報の発達により、近年では発災の予測技術が向上され、減災に向けて事前の準備などができるようになってきましたが、依然として「いつ」起こるのかがわからないという意味では、「地震」は常に身近にありながら、恐ろしい自然現象といえるでしょう。

 

奈良県で災害というと、2014年の紀伊半島大水害など、豪雨による水害の印象が強いと思われます。

地震被害となると、近年多数の死傷者がでた地震被害がないためか、ピンとこない方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。

1995年に発災し、関西一円に大きな被害をもたらした阪神淡路大震災でも、奈良県は比較的揺れが小さかったこともあり、大きな被害は発生しませんでしたが、過去の歴史地震を見てみると、激しい揺れに襲われる地震に度々見舞われていることがわかります。

 

 

日本史上最大級の宝永地震

 

周期的に発生し、近年でもその発生が警戒されている南海トラフの超巨大地震

江戸時代の1707(宝永4)年に、発災した潮岬沖が震源と推定される宝永地震では、現在の奈良県地域でも大きな被害が出ました。

奈良や大和郡山周辺の推定震度は6、天理市では6~7という激しい揺れに襲われます。

地震による激しい揺れで法華寺の塔が倒れ、廃仏毀釈の記事でも取り上げた巨大寺院、内山永久寺では多くの堂宇が倒壊したといいます。

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高取城の石垣や郡山城の建造物も損壊させた大きな揺れで、3,219戸の家屋が倒壊、63名もの死者を出しました。

この宝永地震は、東日本大震災を引き起こした地震に匹敵する規模の巨大地震で、大和国内陸国のため津波による被害はなかったものの、やはり近畿近郊で巨大地震が発生すると、大きな揺れが発生することがわかりますね。

現在の建築物でも震度7となると多くの倒壊家屋の発生が予測されます。

どうしてもプレート境界型の地震では、大津波の脅威が大きく取り上げられますが、内陸部でも激しい揺れにより、家屋の倒壊被害などが起こりうることを日ごろから注意しておくことが必要ですね。

 

伊賀上野地震による意外な脅威とは

 

宝永地震は今からおよそ300年前の出来事になりますが、直近で奈良県地域に甚大な被害を出した地震は、幕末1854(嘉永7)年に発生した伊賀上野地震です。

こちらの地震は、現在の三重県伊賀市北部の活断層震源と推定される、直下型地震で、地震の名称からもわかる通り、伊賀上野周辺で最も大きな被害が起こり、約600人もの死者を出しました。

伊賀上野に次いで大きな被害があったのが、実は現在の奈良県地域でした。

震度は、奈良と大和郡山で6程度であったと推測されています。

史料によりばらつきがあるものの、地震による死者は、奈良で約300人、大和郡山でも約150人と、奈良県地域では記録上、最も多くの犠牲者をだした震災となりました。

興福寺薬師寺の東塔などもこの地震で損傷し、倒壊家屋は奈良で約500戸、大和郡山で約150戸と、宝永地震に続き、この地震でも多くの倒壊家屋が発生しました。

 

この伊賀上野地震でも宝永地震同様に家屋倒壊で多くの方が亡くなったのですが、もう一つ、大きな被害を生んだものがありました。

 

それは「ため池」です。

 

現在の奈良市古市町付近では、集落の東側の丘陵部に堤防を築いた、ため池があったのですが、地震の揺れでその堤防が決壊し、ふもとの集落を押し流して約70人の方が命を落としました。

大雨による堤防の決壊は、水が溜まるまで避難の時間が稼げる場合もあるかと思いますが、地震による堤防決壊は避難の時間が確保できないことも考えられますので大変恐ろしいですね。

海がないため、津波は発生せず、地震による「水」の脅威は、奈良県などの内陸県では見落とされがちですが、奈良県は全国的にもため池の多い地域でもあり、奈良の古市で堤防が決壊したため池のように、丘陵の斜面を利用し、堤防でつくられたため池も多く、現在そのふもとが住宅地となっている場所も多いのではないでしょうか。(実際私の自宅の周辺にも何か所かあります。)

 

地震はいつ来るかわからない災害だけに、常に身の回りの脅威となりそうなものに気をかけておくのが大事だと、あらためて考えさせられます。

 

<参考文献>

http://www.pref.nara.jp/secure/118509/naranosaigaisi2%E3%80%801-1.pdf