皆さんこんにちは。
先日、「稗田環濠集落」に行ってきました。
場所はこちらになります。JR郡山駅の南側で歩くと15~20分ほどの場所になります。
自動車であれば、集落の東端にある「賣太神社」前の駐車場をお借りして、お参りしたあとの散策に便利です。
さて、「環濠集落」とはなんぞや、ということですが、読んで字のごとく、まわりに濠をめぐらした集落のことです。
古くは縄文の昔から戦国時代にかけて、日本全国に見られた集落なのですが、近代になると交通の不便さなどから多くが埋め立てられてしまい姿を消しました。
そんな中、中世環濠の姿をほぼ完全な形で残している全国的にも貴重な集落が、稗田環濠集落です。
こちらが、稗田環濠集落の航空写真です。
集落を囲む水堀がはっきりわかりますね。北東、鬼門の方角の堀が屈曲していて「七曲り」と呼ばれる形です。
稗田環濠の成立年は不明ですが、最も古い文献上の記載は「経覚私要抄」の1444(文安元)年2月の記事に古市胤仙が稗田に陣を敷いたと記載があり、室町中期までにはこの地に集落があり、城砦としての機能を持っていたことが伺えます。
賣太神社の西側にも、近代までは枝堀があり、神社の境内がかつて主郭の役割を担っていたと推定され、集落全体が城跡ともいえます。
中世の大和は大乗院と一乗院の衆徒同士の争いが鎌倉時代から南北朝、戦国期まで延々と続いた戦乱の時代で、奈良盆地には外敵から村落を守るため多くの環濠集落が生まれ、稗田環濠集落もそれらの一つでした。
戦乱が鎮まると、各地の濠は防衛施設としての役目を終え、用水路として使われたり、埋められたりしましたが、稗田環濠はほぼ完全な形で現在まで残されました。
さて、環濠集落に入る前に、土地神様へお参りです。
集落の東端にある賣太神社は、古事記編纂時にその内容を暗誦したことで知られる稗田阿礼を主祭神として、稗田氏の祖神である天鈿女命とその夫ともされる猿田彦命の三神をお祀りしている神社になります。
境内にある「かたりべの碑」。
毎年、8月16日には稗田阿礼の遺徳を偲ぶ「阿礼祭」が行われ、稗田舞などの奉納行事のほか、童話の読み聞かせが行われています。
昭和5年に児童文学者の久留島武彦が、稗田阿礼をアンデルセンに匹敵する「おはなし」の語り部であるとして全国の児童文学者たちに呼びかけ、「おはなしの神様」としておまつりしようと始まったそうです。
こちらが拝殿です。
天鈿女命は芸能の始祖神で福の神です。お多福さんとしておなじみですね。
猿田彦命は土地、方位の神で、あらゆる「始まり(新築、転居、入学、旅立ち...etc)」についてご利益があるとされる神様です。
さて、こちらは賣太神社の東にある濠です。
現在稗田環濠は、治水対策で濠の大部分がコンクリートで整備されているのですが、こちらは土のままで、かつての濠の姿を比較的とどめている場所ですね。
奥に土居も見えます。
こちらは南側の濠。
カメがたくさん気持ちよさそうに泳いでました。
集落内に入ると、見通しの悪いクランク上の路地や袋小路が網の目のようにめぐっていて迷路のようです。
稗田環濠集落の城砦としての特徴がよく出ている風景ですね。
縁起によると1376(永和2)年の創建でなかなかの古刹です。
位置的にも城砦の中心施設であったろうと推察されます。
北側の濠に面したお宅からは、濠に向かう階段がいくつか見られます。
生活用水として濠を活用していた痕跡ですね。
集落西側の濠です。
大きな大和棟の住宅と濠のコントラストが美しい光景です。
こちらは、集落南西の張り出した場所の濠です。
現在は賣太神社の南側は道路になっていて、集落南側を走る道路とつながっているのですが、江戸時代以前は集落の南側の通路はこの写真の場所だけでした。
「横矢掛り」の城郭構造の形をよく残していますね。
南西の張り出し南側の濠です。
稗田環濠の濠の幅は結構広いです。
現在は東側以外はかなり整備されているので、まわりを歩いて見学できます。
賣太神社の前にある、濠の整備事業の看板です。
稗田周辺は大和郡山市内でも土地が低く、大雨が降ると佐保川が氾濫し、洪水が多い地域としても知られます。
治水と洪水対策にも、環濠を役立てているのですね。
さて、散策が終わってどこかで一服と行きたいところ。
稗田からはちょっと徒歩でいくと遠いのですが、少し南に「銀河工場」というロールケーキがおいしいケーキ工場があり、店内でケーキやアイスを購入したり、イートインでいただくことができます。
場所はこちらです。
外観はこちらです。イートインが最近広くなったようですね。
おすすめは「銀河ロール」です。
特徴は、生地がシフォンでふわふわ、生クリームは牛乳感たっぷりで甘さ控えめで、とても美味しいロールケーキです。
こちらは通販でも購入可能です。
|
さて、ここまで稗田環濠集落いかがだったでしょう。
かつて奈良盆地には100以上の環濠集落があったといわれていますが、中世以来の環濠がここまできれいに残っているのはこの稗田環濠だけで、全国的にも貴重な遺構です。
この貴重さに早くから気付いて保存に動いた大和郡山市はなかなかの慧眼です。
また、今回ご紹介した通り、「城郭遺構」としても見どころのある場所なので、城跡ファンの方はかなり楽しめる場所ではないでしょうか。
なにより現在も現役の集落として、今も住民の皆さんの生活の場として現役であることが何より素晴らしいですね。
いろいろご苦労もあるでしょうが、今後もこの景観を守り伝えていっていただけると嬉しいです。
参考文献